枕草子 200段
■野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ。
大きなる木どもも倒れ、枝など吹き折られたるが、萩、女郎花などの上によころばひ伏せる、いと思はずなり。
格子の壺などに、木の葉をことさらにしたらむやうにこまごまと吹き入れたるこそ、
荒かりつる風のしわざとはおぼえね。
◆(台風が過ぎた翌朝、思いがけない面白さがあるものです。
大きな木が倒れ、花の上に横倒しになって痛々しいけれども、格子の枠などに木の葉をわざわざやったかのように細々と吹き入れてあるのは、荒々しかった風の仕業とは思えないですね。)
■まことしう清げなる人の、夜は風のさわぎに、寝られざりければ、久しう寝起きたるままに、
母屋よりすこしゐざり出でたる、
髪は風に吹きまよはされて、すこしうちふくだみたるが肩にかかれるほど、まことにめでたし。
◆(まじめで美しい人が、風の音で眠れず、ぼんやりした表情で家から出てきたところに風が吹き、髪を乱している様子が、なんとも素敵)
清少納言の感性の鋭さが光りますね。